非常ベルを押す。
先日、オフィスビルの防災訓練があった。
BBAは、会社代表として出席せねばならず。
しかも火災の想定が、我がオフィスからの出火、ということで、
BBAが発見、消火、通報までを管理会社のオジサンたちが見守る中、実行せねばならぬという大役を授かったのだ。
非常ベルには忘れられぬ思い出がある。
小学生の頃、放課後にクラスメート7,8人で体育館の掃除をしていた。
ふらふらとさぼっていた男子たちが、非常ベルの周りにむらがっているのでどうしたのかと覗き込むと、非常ベルのカバーが割れていた。
「押してみろよ」「えー、やだようっ」「押したらどーなるんだろうなあ」なんてふざけあっていたのだ。
相変わらずくだらないことやってんなー、と床掃除の続きをしようとした時。
「そんなの、簡単じゃん」と、女の子の声がしたと思ったら、
勢いよく彼女がボタンを押していた。
へっ?!!
と驚くと同時に、体育館中、恐ろしいベルの音が響き渡った。
私ともう一人、学級委員をしていた賢い男の子が顔を見合わせ、
「やばいっ!!!」っと、体育館中の扉を一斉に閉めに走った。
音が外へ漏れないようにと。
しかし、非常ベルというのは、1か所で鳴らせば、学校中のベルが鳴りだす仕組みとなっているので、体育館を締め切ったところで無駄なこと。当時私たちは幼すぎてそこまで頭が至らなかった。
すぐさま火災の確認に、用務員さんや、先生たちが大勢駆け込んできた。
「誰が押したんだーっ!!!」と凄い剣幕で怒る先生たち。
しかし、当時小学生だった私たちには既に、義理というものが存在していたようだ。
全員が彼女を庇い、
「えーー、なんか、、、勝手に鳴りました。誰が押したってこともないんですけどね…。」
と必死に知らない振りをしていたのだ。
が!!!
驚くことに、「えー、誰ー?知らなーい」と一番、すっとぼけていたのが、ボタンを押した張本人だったのだ!!
こ、こいつ、とんでもない女だな……。と子供ながらに恐ろしく思ったものだが、彼女の強心臓には、ちょっと呆れながらも(笑)尊敬してしまう自分がいた。
結局、犯人が名乗り出なかったため、全員で正座を30分させられて、事なきを得た。
今でも学級委員だった男の子とは会えば、この時の話をして笑っている。
そして、ボタンを押した張本人は、現在結構な有名作家として世に出ている。ほんとに小学生の頃から只者じゃないとは思っていたけど(物凄く頭が良かった)、正しい方向に才能が開花してよかった。
ボタンはどうだったかというと。
意外と堅くて力が要った。
彼女に遅れること30年。
押してみた感想である。