きのう、何してたかな。

猫好き、山好き、本好き、映画・ドラマ好き。トドメは食いしん坊OLの、平凡な記録です。

文学の旬。

カズオイシグロ氏がノーベル文学賞を取ったようだ。

おめでとうございます。

 

毎年毎年春樹さんが取るんじゃないか?!と言われているけど、

よくよく考えると、カフカ賞、全米図書賞、ブッカー賞、ビューリッツァー賞などの大賞を取っている人たちが先に取るのが自然な気がする(取るべくして取る)。前回受賞者のアリス・マンローも同じくで。春樹さんはもうちょっと先になるのかもしれないな。その前に他の名立たる海外文学賞を取ってからな気がする。

 

カズオイシグロは、私が二十代の頃、『わたしを離さないで』を読んだのが最初だった。世の中は、牛のクローンが初めて登場した時代だったので、まさか、人間にまで及ぶことだとは想像だにしなかった。当時は「ありえない」ことだったから。だから物凄く、衝撃を受けると同時に、文学の才能はもちろんのこと、イシグロ氏の世の中の先を見据えた想像力に頭が下がった。ほんとうに、震えるくらいに驚いたことを覚えている。倫理も技術も確立されていない、何もない時代にここまで想像を働かせて書いたということに畏敬の念を抱かずにはいられなかった。

 

あれから十数年経って、今ではiPS細胞なるものが発見され、人間の臓器の複製も移植も可能になりつつあるまでに発展した科学の時代においては、この小説も、「ありそうな」こととして読み進まれていくというのは、当時の私とは全く捉え方が違うのだろう。

どちらがいいかは分からないけど、文学も旬というのがあるのかもしれない。

もちろん、文学はどの時代、どの状況によっても楽しめるものだとは思うけど、この時代に読んだからこその感動や衝撃というものに出会えることもあるでしょう。

言い換えれば、自分にとっての「旬」というのか。

やっぱり、存命の作家の本は、刊行直後に読むのが一番、作家と気持ちを共有できるのではないだろうか。

この小説が今書店でたくさん売れているというのをニュースで見て、ふと思ってしまった。

 

ただ、新刊の単行本は、高くて重いのが難なのよ(笑)。