きのう、何してたかな。

猫好き、山好き、本好き、映画・ドラマ好き。トドメは食いしん坊OLの、平凡な記録です。

振り切れ読書。

 

月の前半に、金井美恵子『目白雑録』を読んだ。

金井美恵子、年に1冊くらいしか手に取らないのだが、まあ凄い。

溢れんばかりの教養や知性が備わっているのは分かる。

分かるのだけど、対象者または対象物への容赦なく斬りつける毒舌には驚かされる。

島田雅彦に対する嫌味なんて、辛辣の極みである。

そ、そこまで言う?!とこちらは一歩引いてしまうような悪口のオンパレードである。

もちろん、文壇の方々をうならせるほどの、知的でセンスある悪口ではあるのだけど、悪口を受け止めるキャパが少ないので、すぐ胸がいっぱいになっちゃうのよね…。

親しい誰かと何かについての悪口を話しているかのような、読点のない、長々と流れる文章を読むのが大変しんどかった。

ただ、自分に魅力を分かるだけの読解能力が足りないだけじゃん、という証明にもなり、落ち込んだけど。

途中、「あれ?結局何のこと言いたいのだっけ?」と再び文頭へ戻り、SVOを確かめないといけなかったし、中盤からは、「もうしばらくはいいや(また来年に1冊だな)」、と思いながら読んでいた。

ただ、長々とした文章も、ラスト30項あたりに到達すると、センスある嫌味も悪口も、むしろ小気味良いほどに頭の中に入ってくるので、この快感がたまらないのかもしれないなとも感じた。

私の周囲でも、頭が良くて、気の強い(笑)、そしてお洒落な子たちが皆、愛読している著者なので、彼らとは知性が共鳴し合うのでしょうな……。

 

そして後半は、林芙美子浮雲』。

読み始めて感動した。「なんて、読みやすいんだよぉぉぉ(泣)!!!」と。

中学生か高校生の頃に一度読んだ覚えがあるが、今読むと当時と受けた印象が違っている。(年を取ったってことよのぅ(笑))

戦争という出来事が、どれだけの人たちを貶めたか。市井の人々にどのくらいの哀しみを与えたか。

人間の、女の逞しさを痛感する。

仏印での描写など、インターネットなどない時代によくここまで調べて書けたなあと感心していたら、林芙美子は戦時中に、従軍記者として仏印にも足を運んでいたそうだ。

あの描写には、実際に目にした人でないと書けない説得力があったので、なるほどなと思った。

20年振りに読んだけど、やっぱり傑作だった。ザ、小説ってこういうものよね。

いやあ、金井美恵子ショックもあって、とっても読みやすくて驚いた。