年末、母が「純文学だと思って買ったらSFだった。間違って買っちゃったけど、読んだら凄い作品だった」と作品の良さを力説するので、貸してもらった。
ケン・リュウの『母の記憶に』。
早川書房の「HAYAKAWA SCIENCE FICTION SERIES」と言ったら、どうみてもSFなんだけどっ?!
老眼老女にはこの辺の文字が全く見えていないのだな。
縦二段組みで、総数526Pもの長めの作品だが、1作品20P~100P程度の短編が16編組まれている。
読んでみて驚いた!
自分の考えていたSFの概念を超えている。…まあ私はSFはカール・セーガンで止まっちゃっているんだけど(笑)。
この作家の教養の深さや如何。そして、先見の明。架空の世界なんだけど、近い未来、こういう事件が起こってしまうのだろうなとリアリティがあり、ゾクゾクさせる。
遠く先のアメリカでの未来も描いていれば、満州時代の昔の中国の話も描かれている。当時、その場にいたんじゃないのか、この人?!と思えるくらい詳細に、そしてその場の空気、臨場感、人間の心理も克明と描かれている。拷問シーンとか、リアルすぎて電車の中で「うへぇっ」と漏らしてしまった。どれだけの知識があったら、こんな小説が書けるのだろうか?!と、1編ごと読み進める度に驚愕していた。
これ、たぶんそのうちドラマか映画にされるのだろうな。
読み終えて、この人は一体何者なのか、ウィキで調べてみたら。
ハーバード大学卒で、しかもその先の、ハーバードロースクール卒業の弁護士だった。しかも弁護士だけじゃなくて、コンピュータープログラムにも精通しているのだと。
超、エリート、超、天才だった。
そりゃあ、こんだけのもの書けるわけだよ!!!
納得です。
しかし、ハヤカワSFシリーズって、どんだけこだわって作っているんだ?!
これ、↓本の小口(背表紙以外の3辺)の部分なのですけどね。
なんと。
手塗りって?!!!!
もう、こだわりが変態に近い(笑)。パッケージも内実も、渾身の作ってことなのか。参りました!